枚方談合事件とは

事件の概要

 枚方市が発注した清掃工場の建設工事をめぐり、大阪地検特捜部が「官製談合(市役所が手引きした談合)が行われた」として平成19年5月末に市役所に家宅捜査に入った。
 工事は、平成17年11月に一般競争入札が行われ、大林組を中心とするJV(共同企業体)が落札していた。
 特捜部は、当時の大林組顧問や大阪府捜査二課の警部補、枚方市の小堀隆恒副市長、大阪府議会議員らを逮捕。
 捜査過程で、警部補が大林組から1000万円を受け取っていたことなどが発覚し、現職警官が絡む贈収賄事件に発展した。
 警部補は、談合捜査のエキスパートとして、以前から中司市長に対し、談合防止のための入札・契約制度の改革についてアドバイスを行っていた人物で、本工事についても「談合されている」との事前情報をもたらし、談合防止策などについて助言していた。
 中司市長は、捜査着手から2ヵ月後に、物的証拠もないまま談合容疑で逮捕された。市長が収賄のない談合で逮捕された前例はなかったが、市政混乱の責任を取り、4期目就任後4ヵ月余りで市長を辞職。
 「官」側の中司市長と小堀副市長が談合に関与していたかどうかについて、検察内部でも意見が分かれていた。 当初特捜部は、この二人に金銭の授受があったと見誤って「談合・贈収賄事件」のストーリーを組み立て、強制捜査に踏み切った。しかしそのような事実は全くなく、最終的には談合容疑のみでの異例の起訴となった。
 入札に当たって市は、競争性を高め談合を防ぐために、指名競争入札ではなく一般競争入札を行うとともに、予定価格と最低制限価格の公表、電子入札の実施など、全国的にも進んだ入札制度を採用。 予算額を厳しく精査したため、落札価格は、当時の全国の清掃工場の平均価格を約20億円も下回っていた。
 中司市長は、連日深夜に及ぶ恫喝や脅迫を伴った常軌を逸した取り調べの末、談合の事実を認めていないにも関わらず、検事作成の供述調書に無理やりサインさせられたが、 公判廷では一貫して無実を主張し、供述調書の任意性も否定した。
 一方、担当した検事は法廷で、取り調べでは大きな声さえ出していないと虚偽の証言をし、最高検通知で一定期間保管しておくべきとされている取り調べのメモも破棄していた。
 小堀氏は平成21年4月、大阪地裁が無罪判決を下し、検察側も控訴を見送ったため無罪が確定した。裁判では中司市長が副市長をはじめ市役所内部に何の指示もしていないことが明らかになった。 判決の中でも「(中司市長に)一切金銭授受がなく、いわゆる官製談合ではなかった」ことが認められた。
中司氏は同月、大阪地裁で懲役1年6月執行猶予3年の有罪判決。 22年11月に大阪高裁で控訴が棄却され、上告。平成25年2月に最高裁で上告が棄却された。
中司氏側は大林組関係者から「中司市長は談合とは全く関係がなかった」との有力証言を得ており、現在再審請求の準備をしている。

 民事では枚方市を相手取って中司氏に損害賠償を求めた住民訴訟に勝訴した。
 また、日本経済新聞が平成19年7月6日付朝刊で、ゼネコンから接待を頻繁に受けていたとする内容の記事を掲載したが、 中司氏は「この記事は虚偽である」として、平成22年に大阪地方裁判所に訴訟を提起。 平成24年6月15日に同地裁は、「取材内容はお粗末だ」などとして名誉棄損を認め、中司氏に対し600万円を支払うよう、日本経済新聞社に命じた。 この判決は双方が不服として控訴したが、大阪高等裁判所は和解を勧告し、11月9日に和解が成立、日経側が解決金として400万円を支払うこととなった。 この裁判を通して日経の取材が不十分であったことと同時に、取材に対し検察幹部がミスリードする発言をしていたことが明らかになった。

 

裁判等の経過

大阪地方裁判所
平成19年11月8日 公判前整理手続きが始まる(平成20年9月9日まで計15回)
平成20年10月21日 初公判(公判計22回)
平成21年2月4日 結審 求刑懲役2年
平成21年4月28日 判決 懲役1年6月執行猶予3年 即日控訴

大阪高等裁判所
平成22年6月15日 初公判
平成22年9月28日 結審
平成22年11月18日 判決 控訴棄却 即日上告

最高裁判所
平成25年2月4日 上告棄却


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